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服部名人+領子の”釣りにいこうよ!!”釣りと魚のエトセトラ
服部善郎 服部名人 服部善郎 (はっとりよしろう) 1928年神奈川県・横浜生まれ。
早稲田大学卒業後、読売ニュースのディレクター、釣り番組「日本の釣り」演出・出演などを経て、深夜番組「11PM」の釣りコーナーを23年間にわたり担当。
日本および世界各地の釣りを紹介し、「服部名人」の愛称で広く親しまれる。 NHK趣味悠々講師、海上保安庁友の会理事、JGFA(ジャパン・ゲーム・フィッシュ協会)名誉会員。
小久保領子 (こくぼ りょうこ)ボアエージェンシー所属
趣味である釣りを生かし、テレビ、雑誌、ラジオ出演、コラム執筆など、各メディアで活躍中。
釣りは何でも大好き。管理釣り場や渓流のトラウト、湖沼のライギョから、海の大物釣りまでと、あらゆる釣りに挑戦している。現在、『AnglingFan』、『Fishing Area News』、『食漫』、WEBサイト等で連載を持つ他、CS釣りビジョン『五畳半の狼』にレギュラー出演。
小久保領子オフィシャルブログ>>
小久保領子
◎第三回 秋の戻りガツオ編
両手を広げ、肺が満タンになるほどに吸い込みたくなるような、透明感のある澄んだ空気。爽快感に満ちた涼やかな風が運んでくる、甘く優しいキンモクセイの香。うっすらと化粧を施しはじめた木々の葉っぱ。「嗚呼、もうスッカリ秋だなぁ」と感じる、今日この頃である。秋といえば、食欲の秋。というわけで、今回も、服部名人と共に美味しい魚を求めて、相模湾へと足を運んだ。
さて。築地には『秋の御三家』と呼ばれる魚がいるということをご存知だろうか。サンマ、秋鮭、そしてもうひとつ。それが、戻りガツオである。

カツオには2度の旬があり、一度目は、山口素堂が詠んだ『目には青葉 山ほととぎす 初鰹』という俳句でもお馴染みである、初夏の初ガツオ。そしてニ度目が、秋の戻りガツオである。
カツオは、黒潮に沿って大回遊をする魚で、早春の頃は、沖縄から九州。春には、紀伊半島。そして、初夏には、房総沖を北上する。つまり、この時期のカツオが初ガツオである。
北上を続け、三陸沖まで達したカツオたちは、親潮の勢力が強くなるとUターン。南下をはじめるのだ。このように、南下してきたカツオを戻りガツオという。
ウィリーのしゃくり釣り
お世話になったのは、前回同様、神奈川県は平塚市にある 『庄三郎丸』 さん。
神奈川県平塚市 庄三郎丸
しこたま餌を食べ、脂肪を蓄えたこの季節のカツオは、言わずもがな非常に美味。脂が乗った新鮮なカツオは、釣り人にとって、いや、日本人にとって『垂涎の的』ともいうべき存在といっても過言ではないだろう。そこでだ。第3回目となる今回は、丸々と肥えた戻りガツオを手中に収めるべく、カツオ釣りにトライしてきた。早速、その模様をお届けするとしよう。 釣りに出掛けたのは、9月下旬のこと。お世話になったのは、前回同様、神奈川県は平塚市にある庄三郎丸さんだ。   
庄三郎丸 0463-21-1012
実釣レポート
相模湾にもカツオの群れが入ってきたようで、連日、釣果も右肩上がり。期待に胸を躍らせ、嬉々として船に乗り込んだ私なのであった。
この後、厳しい状況が待ち構えていることなどつゆ知らず…。

当日の天気は曇り。
釣りをするにはあつらえ向きな空模様なのだけれど、いかんせん北風が強い。それでも船長は、スピードを上げて船を走らせる。というのも、カツオという魚はすこぶる足が速いのだ。魚類の中でもナンバーワンの泳力を持っているとか。そのスピードは、最高で時速100キロにまで達するという。ということは、50メートルを1.8秒で駆け抜けるという計算になる。世界最速の男、ウサイン・ボルト選手も肝をつぶすスピード力を持つカツオ。いやはや、驚きである。それ故、船長は群れをいかに早く見つけ、いかに早く追いつくか、ということに力を注ぐのだ。

さて。出船して間もなく、遙か遠くにいくつもの漁船や遊漁船があつまる光景が目に飛び込んでいた。
それは、カツオの群れがいるという紛れもない証拠。船足を伸ばし、その場所へと一目散。船団の中へ入ると、早速船長の声が飛ぶ。
「はい、どうぞ」という合図ともに、乗船者全員が一斉に仕掛けを下ろした。
が、カツオからのアプローチはゼロ。
魚群探知機には、明らかにカツオの反応が出ているというのに。あまりの反応のなさに、あれほど期待感に満ちていた胸のトキメキが、まるで落下するパラシュートのようにスルスルと低下してゆくのを感じた。
と、その時である。
突如、竿先が海中に突き刺さるかの如く、大きく湾曲。
何!?この強烈な引きは!? 
何!? この胸のざわめきは!?
「カツオだよ!焦らなくて良いからね。ゆっくり上げてきて」
服部名人の言葉に、こわばった体が和らいだ私は、ゆっくりとリールを巻き上げた。
ライン(糸)を巻いては、海中に突っ込まれ、せっかく浮いてきたと思ったら、また走られラインが噴き出す。何てやんちゃな奴なんだ。
でも、そんな烈々とした手応えが、たまらなく快感だった。全身が震えるほど興奮した。言葉にならないほど壮快だった。あともう一息で、このやんちゃ坊主を手に収めることができる…。
が、にわかに消えた生体反応。バレた。バラしてしまった。私ったら、やっと喰わせた貴重な一尾を逃がしてしまったよ。ガーン
マダイ イナダ イシダイ
ここから、相模湾の大クルージングがはじまることとなる。走れど走れど、カツオがいない。あっちに行っても、こっちに行っても、どこにもいない。虚しい時間は、刻々と過ぎてゆくばかり。恐らく、3時間以上は相模湾上を迷走しただろう。
このまま沖上がりとなってしまうのか。ふと、そんな不安が頭をかすめる。
しかしこれは、この後訪れるドラマのプロローグに過ぎなかった。「釣りは、何が起こるが分からない」ということを実感させられるドラマが始まろうとしていたのである。沖上がり間近。船長が船を止めた。
「はい、始めて」船長の威勢の良い声が響く。仕掛けを下ろして間もなくのこと。
服部名人の竿が、ここぞとばかりにひん曲がった。鮮やかな竿さばきで魚をいなす服部名人。厳しいファイトの末、ネットに収まったのは本命のカツオ。戻りガツオを象徴する、はち切れんばかりのぷっくりとした体付きが、実にエレガントな一尾だった。 魚拓

実釣レポート
これをキッカケに、船上はカツオフィーバーとなる。
あちらこちらでヒットが続き、そして、私にも。鮮烈なアタリと共に訪れた、カツオ独特の鋭角的なファイト。弧を描いたロッドから、確かに感じるカツオの鼓動は、私の体内に心地良い高揚感や緊張感、幸福感を注ぎ込む。様々な感情が入り混じる、釣った者しか味わえないゼイタクなひと時をかみ締めながらのやり取りは、実に刺激的だった。
こうして、最後の最後に、念願の戻りガツオをキャッチすることができ、ハッピーエンドを迎えることができたのである。
「これがあるから釣りはやめられないんだ」
そう、ストレートに感じた瞬間だった。
「今日はスローな一日だったね。カツオの群れが居付き、そして去る。
そこへまた、新しい群れが入ってくるわけだけれど、きっと今日は、その谷間に当たってしまったんだね。
この釣りの魅力は、
『静』から『動』への変化が突然やってくるところ。
音楽に例えると、

タイはワルツ
ブリはクイックカツオはジャズといった感じで、カツオは引きが強烈で、良く走り、独特の手応えがある魚。
決して難しい釣りではないから、初心者でも豪快な引き味を味わうことができる、オススメのターゲットだよ。
カツオは
パワーを秘めた魚だから、無理をしたやり取りをするとハリスが切れてしまうことが良くあるんだ。なので、釣りに行くときには、ハリスの予備を最低5セットは持っていくようにすると良いよ」

そうアドバイスをくれた服部名人は、餌は無論、ルアーでもカッタクリでもカツオを釣り上げ、見事なお手並みを披露してくれた。
マダイ イナダ イシダイ
カツオ釣りは、11月いっぱいまで楽しめる。脂が乗り、旨味が凝縮した戻りガツオが食べられるチャンスは、今しかない。釣り上げたばかりのカツオは、ハツラツとした新鮮味に満ち、一度食べたらヤミツキになってしまうことだろう。釣り人だからこそ味わえる、『これぞ贅沢の極み』ともいうべき至高の味を、是非ともご堪能いただきたい。

【文:小久保 領子】

◆◇◆次回をお楽しみに!◆◇◆