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服部善郎 服部名人+領子の”釣りにいこうよ!!”釣りと魚のエトセトラ
服部善郎 服部名人 服部善郎 (はっとりよしろう)1928年神奈川県・横浜生まれ。
早稲田大学卒業後、読売ニュースのディレクター、釣り番組「日本の釣り」演出・出演などを経て、深夜番組「11PM」の釣りコーナーを23年間にわたり担当。
日本および世界各地の釣りを紹介し、「服部名人」の愛称で広く親しまれる。NHK趣味悠々講師、海上保安庁友の会理事、JGFA(ジャパン・ゲーム・フィッシュ協会)名誉会員。
小久保領子 (こくぼ りょうこ)ボアエージェンシー所属
趣味である釣りを生かし、テレビ、雑誌、ラジオ出演、コラム執筆など、各メディアで活躍中。
釣りは何でも大好き。管理釣り場や渓流のトラウト、湖沼のライギョから、海の大物釣りまでと、あらゆる釣りに挑戦している。現在、『AnglingFan』、『Fishing Area News』、『食漫』、WEBサイト等で連載を持つ他、CS釣りビジョン『五畳半の狼』にレギュラー出演。
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小久保領子
服部善郎 小久保領子 釣りに行こうよ
◎第九回 マルイカ
ニョロリとした10本の長い足。
内蔵が透けて見えるスケルトンの体。
漆黒の墨を、勢い良く噴射し威嚇する。まるで宇宙人みたいなその奇妙な生き物とは、イカである。
全世界には、450種類もが生息しているといわれているそれ。釣りの対象となっているのは、アオリイカコウイカヤリイカスルメイカなど10種類程度なのだとか。豊かなゲーム性と、抜群の食味を兼ね揃えたターゲットであるがゆえ、人気が高いイカ釣り。
中でも、高いゲーム性と独特の釣趣、そして、とりわけ味が良いと、近年注目を集めているイカがいる。それが、マルイカ
マルイカとは、関東地方の釣り人たちのよる愛称であり、小型のケンサキイカのこと。丸みのあるずんぐりとした見た目から、マルイカと呼ばれるようになったとか。他にも、ジンドウイカアカイカダルマイカなど、地域によって様々な名称で呼ばれているという。
アオリイカ コウイカ ヤリイカ スルメイカ マルイカ ケンサキイカ ジンドウイカ アカイカ ダルマイカ

種々存在するイカの中でも、高級品とされているマルイカ
身質が柔らかく、たおやかな甘みに満ちており、刺身はもちろん、干物にしても、火を通して至極美味
また、低脂肪、低カロリー、高たんぱく。良質なたんぱく質が100g中17.5gも含まれていて、体づくりに役立つ食材なのだ。
アミノ酸の一種であるタウリンも豊富で、血中のコレステロールを下げたり、中性脂肪を減らしたりと、血圧を正常に保ち糖尿病を予防する働きがあるのだとか。
更に、墨の中には、ガンにも有効といわれている物質が含まれているという。
そんなマルイカは、釣り味や食味はさることながら、体にも優しいすこぶる優秀なターゲット。そこで今回は、釣期も食べごろも、春からが本番を迎えるマルイカを狙いに、久里浜は『ムツ六丸』さんへと足を運んだ。
ムツ六丸
ムツ六丸 榎本嶺男 〒239-0831神奈川県横須賀市久里浜8-26-8 046-835-1777  http://www.mutsuroku.com/
マルイカ ブランコ仕掛け 直ブラ仕掛け 直結仕掛け上々の釣り日和に、嬉々として船に乗りこんだ私。
マルイカづくしの豪勢な晩餐を夢見て、沖へと出たのだった。
その夢がガタガタと崩れ去る、厳しい現実が待ちうけていることなどつゆも知らない私は、どこまでも弾んでいたのだった。

「マルイカはね、好奇心が旺盛なわりには警戒心が強く、デリケートなイカなんだ。アタリも繊細だから、その小さなアタリを見逃がすことなくしっかりと取れるかどうかがポイント。10杯釣れれば、合格。20杯釣れれば、万々歳。そんな釣りだよ」

という服部名人の言葉に、私は面食らった。というのは、そんなに繊細な釣りになるとは思ってもみなかったから。それに、ご近所さんたちに惜しげもなくお裾分けできるほどの好釣果が望めるターゲット、というイメージを抱いていたのも理由のひとつ。夢のマルイカづくしの晩餐は、あえなく散ってしまうのか。
はたまた、見事叶えることができるのか。結果やいかに。

マルイカ釣りは、スッテと呼ばれる疑似餌を使うのだが、それを使った3つの仕掛けが存在する。それが、ブランコ仕掛け直ブラ仕掛け直結仕掛けの3種類。
今回は、最もオーソドックスなブランコ仕掛けで挑むことに。
何でも、ブランコ仕掛けはハリスが長いため、初心者でも取り込みの際にバラシが少なくなるという利点があるのだとか。マルイカ釣り初体験の私には、おあつらえ向きである。

「まず、仕掛けが着底したら、1m巻き上げる。10秒くらい待って何も反応がなかったら、更に1m巻き上げ、少し待つ。この動作を繰り返し、5mくらいまで探って反応がないようだったら、ストンと一気に底まで仕掛けを落とすんだ。 アタリがあっても、勢い良くアワセてはダメ。マルイカは身が柔らかいから、手が切れてしまうんだよ。アタリがあったら、スッと聞きアワセを入れて、イカが乗ったら一定のスピードでゆっくり巻いてくること。アタリは、竿先に反応が出たり、竿先がグッと一気に入ったりと様々。イメージしにくいかもしれないけど、釣ってゆくうちに分かってくるはずだよ。じゃぁ、やってみようか」
服部名人から基本的となる釣り方をひと通りレクチャーしていただき、実釣を開始した。が、どうしたものか、全くもってアタリがない。
魚群探知機でマルイカの反応を探しつつポイント移動を繰り返すも、悲しいかな、それらしきアタリは皆無。虚しい時間ばかりが流れてゆく。

一体、どれほどの時が経ったのだろう。
恐らく、出船から4時間以上は経過していたと思う。このまま、一杯も釣れずに終わってしまうかもしれない。
マルイカづくしの晩餐。
その夢が、重たい暗雲に覆われはじめていた。

と、にわかに服部名人の竿が、まるで生命を宿したかのように躍動しはじめた。流れるような手つきで仕掛けを回収する服部名人。
すると、海面から踊り出たのは、本命のマルイカだった。ぷっくりとした体つきが実にキュートなそれ。嫉妬さえしてしまうような、艶のある白く透き通った肌も、これまた魅力的な一杯だった。

「マルイカは、ソフトの誘うのがセオリーなんだけど、今日は激しく誘ったほうがよいみたいだね。強めにしゃくりを入れ、竿を降ろしながらリールを一回転。そしてまたしゃくる。そうやってみな」。
本命のマルイカ 
服部名人の助言とおりに誘いを入れる。
私は、たちまち目を丸くした。竿先がグッとお辞儀をした刹那、心地良い重みが手元に伝わった。
躍動感たっぷりの確かな手ごたえに、心臓が大きく波打つのを感じた。ゆっくりとリールを巻き上げ、仕掛けを手繰る。
と、ピチピチと踊るグラマーなマルイカの姿が。やっと手にすることができた本命。苦戦の末の一杯だっただけに嬉しさもひとしおで、思わず欣喜雀躍してしまったのは言わずもがな。
心をトキめかすあの手ごたえをもう一度と、再び仕掛けを落とす。すると、またヒット。アタリのアの字すらなかった、これまでの数時間。そんな、心が折れそうになるくらいの沈黙がまるでウソのようにアタリがではじめ、立て続けに5杯のマルイカをキャッチすることができたのである。

グラマーなマルイカ

釣りというものは、思いがけないドラマを生み出し、大いなる喜びと感動を与えてくれる。つくづく、夢の詰まった素晴らしい遊びだということを痛感したのだった。諦めなければ、きっとターゲットは応えてくれる。夢と同じように、信じて追い続ければ、必ず思いは届くんだ。釣りも、人生も同じなのだね。ふとそんなことを思ったのだった。

「今日は、厳しい一日だったね。こういう日もあるんだよ。こればかりは、自然が相手だから仕方ない。
でもね、いくら状況が悪くても、今日のように一日一回は必ずチャンスがあるんだ。だから、諦めないで根気良く釣りつづけることが大切だよ。 夏に向けて、マルイカは浅場に入ってくる。
シーズンはじめの 1月は、水深100~80mで、オモリは80号3月は60~40mで、オモリは60号 5月からは、40~20mで、オモリは40~20号と、変化してゆく。
釣れる型は小さくなるけれど、狙う水深が浅くなるから、入門者や初心者にとってはチャレンジしやすい季節だよ。 それと、イカ釣りに行く時、必ず持っていってもらいたいものがある。それが、歯ブラシ。
スッテに墨や甘皮が付いていると、イカの乗りが悪くなるんだ。スッテが汚れたら、歯ブラシでキレイにすることを忘れずに」


という服部名人。オモリの重さが変化すれば、おのずと竿の調子も変わる。また、仕掛けやスッテなども種々存在するため、初心者にはどんなものを準備すればよいのが悩むところ。
そんな時は、事前に船宿に問い合わせ、仕掛けは現地で購入することをオススメする。

集合写真

最後に、イカを持ち帰る際の注意事項を。
通常、釣った魚をクーラーボックスに入れて持ち帰るときには、氷と海水を入れる。
が、イカの場合、海水を入れるのは厳禁
また、直接氷に付けることも。せっかく釣った鮮度の良い透明なイカが、白く濁ってしまうのだ。
ビニール袋(ジップロックがあると便利)などに入れてから、氷と共にクーラーボックスへ

そうそう、当日キャッチすることができた6杯のマルイカは、帰宅後すぐに処理をし、晩御飯のおかずに変身。
煮物焼き物お刺身にと、マルイカづくしの晩餐は、我が家の食卓に美味しい笑顔をプレゼントしてくれたのだった。心地よい歯ごたえと、優しい甘みのお刺身は、いやはや美味だったなぁ。
丸っこいキュートな見た目とは裏腹な刺激的な引きと、思わず目を細めてしまう極上の味わいを是非。


【文:小久保 領子】

◆◇◆次回を乞うご期待!◆◇◆