深呼吸倶楽部 しんこきゅうくらぶ 山下裕二の日本美術ナビゲーション おすすめ美術館 出光美術館 サントリー美術館 三井記念美術館 大倉集古館 静嘉堂文庫美術館

山下裕二の日本美術ナビゲーション
プロフィール
1958年広島県生まれ。東京大学文学部美術史学科卒業、同大学院修了。
日本美術史研究者、明治学院大学教授、日本美術応援団団長、山種美術館顧問。
専門は室町時代の水墨画だが、縄文から現代まで幅広く応援する。
主な著書に『室町絵画の残像』『岡本太郎宣言』『日本美術の20世紀』など。
赤瀬川原平氏と共に「日本美術応援団」を結成し、独自の活動を展開中。
共著に『日本美術応援団』『日本美術観光団』『実業美術館』などがある
山下裕二先生
【 第1回 おすすめ美術館 】   【 第2回 新オープン 】   【 第3回 あとがき 】
◎出光美術館 www.idemitsu.co.jp/museum/
館蔵品を活用して、派手さはないけれど中味の濃い、味わいのある展覧会を数多く開催しています。

9/19からは「芭蕉 <奥の細道>からの贈りもの」が開催されます。だれでも知っている「古池や蛙飛び込む水の音」の句で有名な俳聖、松尾芭蕉(1644-94)。芭蕉は、その生涯の内に、句を記した懐紙や短冊、弟子たちに宛てた仮名の書状など、江戸時代としては突出した水準の、美しい仮名書跡を残しました。本展では、芭蕉の三大真跡コレクションの一つである出光コレクションの中から厳選した真跡26点に、「奥の細道」の旅関連の仮名書跡から芭蕉の筆跡の変遷を辿ります。また併設として仙厓の名品が出展されるそうです。
「書なんて難しいのでは」と引き気味になりましたか?
「書」を鑑賞するコツは、まずは読もうとしないこと、書いてあることの意味を知ろうとしないことです。
書に親しみにくいのは、わかろうとしなくては、と自分でハードルを作ってしまうからです。私だって、たいして読めませんよ(笑)。
まず文字を、線と形でとらえてみましょう。これは海外のコレクターに通じる見方ですね。アメリカには、書のコレクターもいるんですよ。彼らは文字を形としてとらえ、書全体をひとつの作品として見て楽しむのです。全体を見てから、脇に添えられている展示解説を見ると、そこではじめて書かれていることの意味や文字が わかるのですが、そこで興味を持ったらさらに深く調べてみれば良いでしょう。

またこの時期、出光美術館で見ることができる仙厓の作品は、とてもおもしろいですよ。笑えます。江戸時代の禅僧・仙厓は、飄々として肩の力を抜いた禅画を残し、自らたくさんの画讃も残しています。

出光美術館には、疲れたら、お茶が飲める(しかも無料で)コーナーがあります。静かでゆっくりできる場所なので皇居を眺めながら、しばし休憩をするのも良いですね。

*****出光美術館で開催される展覧会
「芭蕉<奥の細道>からの贈りもの」 併設:仙厓展
(2009年9月19日(土)~10月18日(日))出光コレクションの芭蕉作品を中心に、「奥の細道」の旅関連の仮名書跡を加え、芭蕉の筆跡の変遷をたどります。

出光美術館 チラシ

出光美術館

出光美術館
◎サントリー美術館 www.suntory.co.jp/sma/
六本木の新名所、東京ミッドタウンにある美術館です。大江戸線六本木駅から直結しているのでアクセスは大変便利です。
落ち着いて鑑賞できるこだわりの展示空間です。設計を手がけたのは建築家・隈研吾(くまけんご)氏。木と展示ケースや照明は、トップレベルですね。
館蔵品のほか、外部からも美術品を借りてきて展覧会を開催していますが、内容によっては混雑するので、大きな展覧会のときは事前に混雑状況を確認していくと良いかもしれないですね。ちなみに、12月5日に私はここで鏑木清方についての講演会を行う予定です。

*****サントリー美術館で開催される展覧会
「美しの和紙 -天平の昔から未来へ-」
(2009年9月19日(土)~11月3日(火・祝))
日本人の美意識によって育まれた多様な和紙の文化を紹介。

清方/Kiyokata ノスタルジア-名品でたどる鏑木清方の美の世界-
2009年11月18日(水)-2010年1月11日(月・祝)
近代日本画の巨匠、鏑木清方。
明治から昭和という時代に彼が描いた江戸情緒あふれる風俗画を紹介 ※山下先生の講演会が12月5日に予定されています。

出光美術館 チラシ
サントリー美術館

サントリー美術館
◎三井記念美術館 www.mitsui-museum.jp/aboutus.html
重厚な洋風建築そのものが重要文化財である三井記念美術館。
ここも、出光、サントリー同様、オトナの美術館ですね。

*****三井記念美術館で開催される展覧会
特別展 
慶応義塾創立150年記念 夢と追憶の江戸
-高橋誠一郎浮世絵コレクション名品展-
(2009年9月19日(土)-11月23日(月・祝)
慶應義塾塾長代理や文部大臣を歴任した経済学者・高橋誠一郎(1884~1982)の浮世絵コレクションのなかから約300点を精選し、江戸という時代と空間への文化的な記憶をたどる展覧会

特別展
江戸の粋・明治の技
柴田是真の漆 × 絵
(2009年12月5日(土)-2010年2月7日(日)
幕末から明治期に活躍した漆芸家・画家である柴田是真(1807~1891)の洒脱なデザインと卓越した技巧は、現在では日本よりも欧米で高く評価されています。
米国テキサス在住のエドソン夫妻が収集した作品約50点が初めて里帰りする本展では、これらに日本 国内の優品を加え、是真芸術の魅力を紹介します。
※山下先生の講演会が予定されています。(詳細未定)

出光美術館 チラシ
三井記念美術館

三井記念美術館
◎大倉集古館 www.hotelokura.co.jp/tokyo/shukokan/
ホテルオークラ創始者大倉喜七郎の父で、明治の実業家大倉喜八郎 が1917年に創立した、日本初の私立美術館です。
ホテルオークラの 向かい側に立っています。

*****大倉集古館で開催中の展覧会
「花・華 -日本・東洋美術に咲いた花-」 
(2009年8月4日(火)~9月27日(日))

大倉集古館の所蔵品の中から、日本・東洋美術に見られる花モチーフの諸相を、梅、桜、牡丹、蘭、菊 など、花ごとのテーマに分けて紹介。

出光美術館 チラシ
大倉集古館

大倉集古館
◎静嘉堂文庫美術館 www.seikado.or.jp/
以上、都心にあって、そのほとんどが駅に直結している美術館を紹介しました。
美術館に何度も足を運ぶうちに、それぞれの美術館の性格がわかってきて楽しいものですよ。お気に入りの美術館が見つかると、館を訪れる楽しさがいっそう増すことでしょう。最後に、都心ではありませんが、きわめつけにハイクラスな美術館を紹介しておきましょう。

足回りは少し不便ですが、都内のハイクラス美術館を訪れることに慣れたら「まだこんなにすごいものがある!」と驚くこと請け合いの美術館、静嘉堂文庫をご紹介しておきましょう。
聞きなれない名前かもしれませんが、美術館としての歴史は古く、三菱財閥時代の岩崎家のコレクションがそっくり継承されています。コレクションの地層が厚いことがうかがえる展覧会をよく開催しています。23区内とは思えないほど静かな場所にあり、二子玉川駅からバスも出ていますが、停留所からも少し歩くのでできれば車で行くことをお勧めします。駐車場もあります。

*****静嘉堂文庫美術館で開催される展覧会
静嘉堂の古典籍 第8回「源氏物語の世界」
(2009年9月12日(土)~10月12日(月・祝))

鎌倉時代に書写された『源氏物語』本文をはじめ、先行する 『伊勢物語』 また 『源氏物語湖月抄』 『源氏男女装束抄』 『車図』 など、鎌 倉時代から江戸時代までに著された注釈書・有職故実書を含め、多彩な 『源氏物語』 の世界をご紹介します。

出光美術館 チラシ
静嘉堂文庫美術館

静嘉堂文庫美術館
美術館でいまどんな展覧会を開催しているか、どんな作品が見られるかという情報は、イベント情報誌でも わかりますし、それぞれの美術館の公式サイトでより詳細な情報を入手することができます。
好きな美術館ができたら、こまめに公式サイトをのぞいてみると良いでしょう。

最後に、客観的に美術展や作家について書かれているブログもお勧めしておきます。

「弐代目 青い日記帳」 (http://bluediary2.jugem.jp/)
筆者が本当にこまめに美術展めぐりをしています。
話題作の見どころなども丁寧に書いているので情報収集にはぴったりです。

「フクヘン。」 (http://fukuhen.lammfromm.jp/)
若者に人気の雑誌、BRUTUSの副編集長、鈴木芳雄さんのブログです。私と知己の仲ですが、彼も忙しい時間を縫って実にマメ に美術館に足を運んでいます。現代アートについての紹介もしているので、ぜひ見てください。

来月は、移転や改築を経てこの秋から新たにオープンする二つの美術館、山種美術館と根津美術館をそれぞれの開館記念展の見どころを 交えながらご紹介する予定です。

◆◇◆それではまた来月お目にかかりましょう!◆◇◆